新型コロナの感染症分類の変更と共に、抗ウイルス薬を特定の感染症外来に配給する体制から一般に流通する方針に切り替えられました。これにより一般のクリニックが対応することの多い比較的軽症の患者さん(この場合、咳症状はあっても呼吸困難はなく、概ねSpO2※1>96%)に使用できる薬が増えました。

 ただし、コロナ陽性なら抗ウイルス薬を必ず使うということではなく、それぞれ特徴や注意すべき副作用があるので、重症化リスク※2が少ない人には消炎鎮痛薬・咳止めなどのような対症療法となるお薬だけ処方して経過をみるケースが多くなると思います。

 まだ、抗インフルエンザ薬のように誰でも比較的安全に使える薬ではない、という点は注意が必要です。以下に使用可能になった新型コロナの抗ウイルス薬をまとめてみました。

《新しく一般のクリニックで使用が認められた新型コロナの抗ウイルス薬》

① ラゲブリオ(モルヌピラビル)

【対象】成人(18歳以上)、発症5日以内、重症化リスクのある患者。

【注意点】「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」には投与しない。授乳婦には授乳の中止を検討。

【内服方法】1錠200㎎:1回800㎎を1日2回、5日間。

② パキロビット(ニルマトレルビル/リトナビル)パック600/300

【対象】成人・体重40kg以上の小児(12歳以上)、発症5日以内、重症化リスクのある患者

【注意点】「腎機能又は肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者」などには投与しないこと。授乳婦には授乳の中止を検討。中等症腎機能障害(eGFR30-60ml/min)には減量しパキロビットパック300を使用する。高度腎機能障害患者(eGFR30ml/min以下)には使用せず。
【内服方法】パキロピットパック600:1回ニルマトレルビル300㎎とリトナビル100㎎を1日2回、5日間。

③ ゾコーバ(エンシトレビルフマル酸)

【対象】成人・小児(12歳以上)、発症3日以内、重症化リスクがない方にも使用可能。

【注意点】「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」または「腎機能又は肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者」などには投与しないこと。授乳婦には授乳の中止を検討。併用禁忌および併用注意の薬剤が多数あること。重症化リスクを下げる薬ではない点を考慮して使用すること。

【内服方法】1錠125㎎:1日目は375㎎を1日1回、2-5日目は125㎎を1日1回。

【併用注意】ピモジド、キニジン硫酸塩水和物、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン、イソプロピルアンチピリン、シンバスタチン、トリアゾラム、イブルチニブ、ブロナンセリン、アゼルニジピン、アゼルニジピン、オルメサルタン、メドキソミル、スボレキサント、ロミタピドメシル酸塩、リファブチン、リバーロキサバン、カルバマゼピン、エンザルタミド、ミトタン、フェニトイン、リファンピシン など他多数。

 実際に使用しなくても、いざ必要になったときに抗ウイルス薬が選択できるということは安心感があります。以上のようなことに配慮しながら、患者さんと相談し納得のいく治療を心がけたいと思います。

※1 SpO2:血中酸素飽和度

※2 重症化リスク:慢性の呼吸器疾患・心臓病(高血圧を含む)・肝臓疾患・腎臓疾患・インスリンや内服治療中の糖尿病・鉄欠乏性貧血を除いた血液疾患・免疫系疾患やステロイドなどの薬物治療・基準以上の肥満(BMI>30)・61歳以上など

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