今、厚生労働省が中心となって「医療DX」と呼ばれるシステム構築に取り組んでいます。自分の勉強も兼ねて、ブログでまとめてみたいと思います。医療DX(DXとはDigital Transformationの略)とは、医・歯・薬だけでなく、介護保険・母子手帳などの福祉・行政の分野に関わる非常に大きなものです。身近なところでは、すでに各病院やクリニックに保険証の代わりになるマイナンバーカードが導入されていますね(今年12月には従来の保険証が廃止予定)。下は内閣官房の資料で、今後想定される医療DXの大まかなタイムテーブルです。

※内閣官房資料

 実をいうと当クリニックでは電子処方箋の導入に、あまり積極的ではありませでした。処方箋を電子化しても、結局患者様に内容を出力した紙を渡さねばならず、手間ばかリ増えて患者様に目に見えたメリットがないと感じていました(この紙は先々廃止されるかもしれませんが)。それでも、これからのことを考えて電子処方箋導入の準備を始めました。

 医療分野ではマイナ保険証・電子処方箋の導入に引き続き、検査値やアレルギー・薬剤の禁忌情報などの共有化、レセプト情報の共有化などを次々に行い、最終的には電子カルテを標準化しこれも共有しようという提案もされています。しかし、これは情報をアップする作業を各施設が怠らず、きちんと入力されることが前提です。「共有地の悲劇」が起きないか、個人情報の漏洩が起きないか、いくつか心配な点が残ります。

 国やお役所はとにかく大きなシステムが好きです。大きなものは安心・安定をもたらし、上からの改革で無駄を省いて効率化ができると思っています。確かに、それは行政にしかできないことですね。一方で、柔軟性がなく小回りが利かないシステムは、時代の変化についていけません。小さなニーズの取りこぼしを重ねて信頼を失ったり、予想外のイノベーションが起きたりします。計画当時の最新の技術が運用を開始する頃にはすでに陳腐化している、なんてことだってありえます。

 ただし、一方で医療DXがサービスの効率化を促して、一定の人的・経済的なコスト削減につながるとすれば、実に大きな成果だと思います。厚生労働省が最終的に目指している、肥大化する医療保険の抑制・皆保険制度の延命につながるのか、冷静な目で見てみましょう。