糖尿病について

 最近の健康志向(ジムやランニング、サイクリングなどの運動をを生活習慣に取り込むこと)が糖尿病発病の一定の歯止めになっているとはいうものの、生存に直結した食事への欲求は抑制が難しいこともあり、世界的な糖尿病増加のトレンドは今後も続くものと思われます。

 糖尿病にはインスリン分泌不全によるⅠ型と、インスリン抵抗性が問題となるⅡ型があります。患者数はⅡ型が圧倒的に多く、さまざまな製薬会社がこの分野での新薬の開発を行っています。

 経口血糖薬はどのタイプの薬でも程度の差がありますが、低血糖発作を起こすリスクがあります。またカラダは必要なインスリン量が相対的に不足するのでブドウ糖が利用できなくなり、脂肪を分解してエネルギーにしようとする。そこで血中や尿中のケトン体(脂肪の代謝産物)が増えます。

 このケトン体が非常に増えてくるようだと血糖コントロールが良くないと判断します。こうした経口血糖降下薬の副作用や効果を確かめながら、薬の調整をする必要があります。当クリニックでは、空腹時血糖やHbA1c、尿中ケトン体などを定期的にチェックしながら内服を調整します。

 ただ、2型糖尿病でも血糖コントロールが難しい場合は、インスリンの皮下注射を導入せざるをえないです。インスリン導入が必要な重症の糖尿病は、基本的に専門の診療科でインスリン導入をしていただいてます。

 また他のクリニックで経口血統硬化剤の内服をしていましたが、今後当院で治療を希望されるようなケースがあります。そのような場合はまず前の処方を踏襲し、データを確認しながら薬を少しずつ少なくします。処方は全体をシンプルにすることを心がけています。

 自分たちに何ができるかを考えながら、選んでいただけるクリニックを目指したいと思います。

猫がウジャウジャ

 昔から動物が周りにいる生活でした。田舎で育ったので、近くで虫を捕まえてきては虫かごの中で育てたりしてました。自宅には魚もいたし、鳥もいたし、犬もいましたが、とりわけ猫が好きでした。

 今でも猫がウチに3匹もいるのに、休日に子供と猫カフェに行ったりします。モフモフしたのがウジャウジャいると、見ているだけで楽しくなってきます。猫の性格は大きな違いがあって、とても面白いです。猫は人間と共同生活しながらも、色濃く野生のハンターの特色を残している点も面白い。

 死んだ動物や弱った動物を専門に取る動物(代表:ハイエナ)をスカベンジャーとかいいますが、猫はハンターでありプレデターです。丹念に毛づくろいをするのは狩りの時に風下にいる獲物にも臭いで気付かれないためだし、狭いところが好きなのは草むらで長いこと身をひそめ獲物を待つことに有利です。そういえば、よくウチの猫たちも段ボール箱によくちんまりと収まっていて、危うくそのまま片付けそうになります。

 世界中の家猫は遺伝子を調べると、古代エジプトで家畜化された一頭のリビアヤマネコに遡るそうです。身近な動物ですが、野生を感じさせるところが人気なのかもしれません。ところで長々と聞きかじりの猫の話を書きましたが、当クリニックは動物病院ではありません。猫を連れてきていただいても、私に猫を診察する技術はありません(単にかわいがることしかできません)。恐れ入りますが、お間違えなきようお願いします。

認知症の治療薬

 認知症とは認知力の低下をきたす病気の総称です。アルツハイマー型が有名ですが、実際患者様の半分以上がこのタイプです。他に脳梗塞が多発して認知力の低下をきたす脳血管障害型(昔のビンスワンガー病など)や前頭側頭葉変性症(昔のピック病など)、そしてパーキンソン症状を併せもったレビー小体型認知症などがあります。

 まずはしっかりと診断して治療の必要があるのか、治療を始めるならそのタイミングは今なのか、病気の正体を見極める必要があります。ところで、もし実際アルツハイマー型認知症になってしまったら、どういう治療法があるのでしょうか?

 アルツハイマー型認知症の患者様は脳内の神経伝達物質のアドレナリンとコリンのバランスが崩れていることが分かりました。そこでコリンの減少を防ぐために、分解酵素(コリンエステラーゼ)を抑制するようなお薬が開発されました。実際はこのような薬を使いながら、生活習慣・運動療・食事に注意して患者様の生活改善・維持を目的に治療します。

 さらにアルツハイマー病で記憶力の低下など中核症状より、患者様の治療で問題となるのが周辺症状(BPSD)です。病状が進行すると、夜中に騒ぎ出したり、徘徊したりするようなケースもあり、献身的な家族ほどBPSDに苦しめられます。これらには決定的な治療薬はないので、既存の向精神薬や漢方薬などを使って柔軟に対処していく必要があります。

 ドネペジルを初めとするコリンエステラーゼ阻害薬は主に軽度から中等度の認知症に効果を示し、剤形も内服薬だけでなく皮膚に張るタイプのものも出ています。また中等度から高度の認知症には、メマンチンというNMDA受容体阻害薬も開発されています。

 しかしいずれの薬も症状の改善や進行を遅らせることが期待できるものの、アルツハイマー病そのものを治療したり予防したりするものではありません。次世代の治療として、神経系へのアミロイドβの蓄積を防ぐようなお薬の登場が待たれます。

 

 

 

頭痛のいろいろ

 脳神経外科をしていると、様々な頭痛をお持ちの患者様がいらっしゃいます。外来でよく診療する頭痛は、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛、それぞれの混合型頭痛などです。緊張型頭痛は肩こりや首の痛みからくる頭痛ですが、肩こりだから頭の痛みが軽いかというとそんなことはありません。酷い方は身動き取れなくなって、吐いてしまうほどです。

 頭痛で来られる方の、半分ぐらいがこのタイプの頭痛です。このタイプの頭痛は消炎鎮痛剤の他に筋肉のコリをほぐす薬や、夜間にしっかり寝て疲れを取っていただきながら、首や肩に緊張を強いる生活習慣の改善を目指します。

 次に多いのが片頭痛です。おおよそ頭痛外来の20-30%ぐらいで、目の前がチカチカするような前兆があってから出現する古典的片頭痛の他に、前兆が少なく生理周期に一致して出現する生理関連性片頭痛などがあります。これはトリプタンやエルゴタミンなど特殊な頭痛薬の他に、カルシュウム拮抗薬などの予防薬、抗セロトニン薬やキサンチン誘導体などの様々な薬が開発されています。

 他は、群発頭痛。なぜか圧倒的に中年の男性に多く、アルコールや飲酒が引き金になる頭痛です。目の奥がえぐられるように痛むとの症状があり、発作中は涙や鼻水がボロボロ出ることがあります。発生機序については不明な点があり、使える薬も限られておりちょっと厄介な頭痛です。

 他には慢性副鼻腔炎、緑内障、高血圧などでも頭痛が出ます。最近はパソコンなどの普及で、眼精疲労からくる頭痛も増えている気がします。また低気圧が近づいてくると出る、チョコレートやチーズなどを食べると出る。鎮痛薬を飲むことで出てしまう頭痛もあります。よく眠れなくても頭痛は出るし、眠りすぎても頭痛が出ます。そういった一人一人の頭痛の特徴を拾い上げて、合う薬を見つけて症状を抑え日常生活を楽にする。出来たら薬を少なくし、飲まないで済むように指導する。このあたりが、頭痛外来をやる医者の腕の見せ所だと思います。

好きな本:中島敦「山月記」

 中島敦を初めて読んだのは他の多くの人と同じように、高校時代の教科書の「山月記」だっだと思います。若々しい無駄や飾り気のない文章が好きになり、たびたび開く小説になりました。この小説の特徴として、主人公の李微の口から、自分が虎になってしまった顚末が、詳細に語られます。詩人としての自己実現を目指しつつも、驕慢や羞恥心から挫折し、終いには人心を失った虎になってしまう。理想と現実のはざまでフラフラしている、将来に不安を抱えた若い人に強く訴えかけてくる内容だと思います。

 ところで、フランツ・カフカの「流刑地にて」(訳:池内紀)のあとがきで中島敦が横浜の女子高の教師をしていた時代に、カフカの短編集を読んでいたことを知ってびっくりしました。1933年頃のことでカフカの受容としては、日本ではかなり早い方です。それから後ではナチスドイツの台頭で同盟国日本では、ユダヤ人カフカの本は手に入らなかったのではないか。中島敦が読んだのはイギリスで出版された「万里の長城」という短編集です。この中に「変身」が入っていたかどうか、私は知りません。

 カフカの「変身」では主人公のザムザが虫に変身してしまいますが、理由は一切語られません。それが実存の不安やユダヤ人に忍び寄る人種差別主義の恐怖を先取りしたものだといろいろな解釈を生みましたが、解明されてはいません。片や小説の中央にでんと居座って一向に解消されない謎として残る「変身」、片や物語りの発端として機能し心情的に受領されていく「変身」。変身そのものの扱い方も対照的です。

 最近、「文豪ストレイドックス」という中島敦が異能力で戦う、というぶっ飛んだ設定のアニメを見ました。「山月記」まだ若い人に好かれているんだなあと思いました。

好きな本:畑正憲「ムツゴロウの青春記」

 この本を買った時のことをよく覚えています。私は小学5年生で、近くの大学祭に遊びに行った時に学生たちがやっているフリーマーケットのような古本屋で買いました。ちょっと立ち読みしただけで止まらなくなって、小学生のおこづかいでポンと変えるような値段でしたが、衝動買いしてしまいました。

 ムツゴロウさんはその後北海道へ移住し、80年代のフジテレビの「ムツゴロウとゆかいな仲間」シリーズですっかり有名になりました。ただこの本はそれよりずっと以前のお話で、中学・高校・大学を通じて成長していく自半生記といったものです。テレビでは好々爺然とした雰囲気のムツさんでしたが、エッセイではとってもハード。親に反対されても好きな道へ進学し、初恋の相手と駆け落ちし、麻雀で生計を立て、大学で研究にいそしむかと思いきや、ある時期はドヤ街を彷徨う。

 この後「どんべえ物語」「ムツゴロウの結婚期」に続いていくのですが小学生から中学生にかけてそんな破天荒な生き方にあこがれ、ムツさんのエッセイをむさぼるように読んだ時期がありました。ただテレビのムツさんはちょっと演技しているような感じがして、ほとんど見なかったです。

 「青春記」は1935年生まれのムツさんが敗戦後突如もたらされた戦後民主主義の自由な空気を吸いながら、学問や恋愛を通じて自己を確立していく話なのですが、小学生が読むのにはいささか刺激的な、性にまつわる話も多かったです。最近、東京ムツゴロウ動物王国で抱えた負債を返済し、時々またテレビで姿を見かけるようになりました。麻雀で数億円の返済をしたという噂もあるようですが、齢80歳を迎えられてまだまだ元気でらっしゃるようです。また面白いエッセイを書いてほしいですね。

好きな本:江戸川乱歩「電人M」

 昔から本を読むのが大好きです。好みの作家やジャンルはいろいろ変遷しましたが、推理小説は変わらず大好きです。

 思えば私の原点は、小学校の図書館にずらり並んでいたポプラ社の推理小説のシリーズ。シャーロックホームズもルパンも明智小五郎も、このシリーズで出会いました。大概おどろおどろしく描かれた表紙に、大きな字で荒唐無稽な物語がつづられている。本は古く紙は黄ばんでゴワゴワしており、前に借りた子供が齧ったせんべいの粉とかが間に挟まったりしているのですが、布団に潜り込んで親をやり過ごしながら夢中で読んだものです。

 当時のおすすめはこれ、江戸川乱歩の「電人M-少年探偵」。昭和30~40年代の東京を舞台に、小林少年と明智小五郎、怪人20面相が激しく火花を散らす物語です。しかし今思い出すと、お互いのやり口が実にまだるっこしい。火星人は出るわ、月面を模した遊園地は出てくるわ。さらに、二十面相は身長2m近い電人(ロボット)の中に入って夜の東京を徘徊し事件に一切関係ない人たちを驚かせ、明智小五郎は別人に成りすまして小林少年が死にそうになるまで知らん顔している。お互いに鋭敏な推理や華麗な盗みのテクニックを繰り出すようなことは皆無だった気がします。それでも面白かったんです。

 小学生4年生だった私はクラスで推理小説をよく読んでいることで有名だった〇〇くんに、この本をすすめようと思いました。そこである日〇〇くんに「最近、読んで面白かった本ある?」と話を切り出したら、「うーん、アガサ・クリスティの『スタイル荘の怪事件』かな?」と切り返されて、急に恥ずかしくなってこの本の話ができませんでした。

 しかしなんと、今のAmazonのカスタマーレビューで復刻版が星4つをキープしているのを見つけました。わかる人には、わかるのです。

五月と頭痛

 今日は昨日と打って変わって良い天気です。水曜日はクリニックはお休みです。

 節目の4月が過ぎてGW明けになると、ハッキリしない体調不良の患者様が増えます。世間では5月病などといいますが、新入生・新人社員ばかりの話ではありません。5月は湿度が低くて快適なのですが昼夜の寒暖差が激しく、毎日夏服や冬服を出したり引っ込めたりするような気候が続きます。これも体調を崩してしまう原因の一つだとも考えられます。

 この時期は頭痛の患者様も多くなります。もともと頭痛持ちだった方で仕事が忙しかったり生活のリズムが乱れたり、さらに新たなストレスや体調不良も加わって、頭痛が酷くなってしまう。そういったケースがこの時期、特に多く感じられます。

 当クリニックは患者様に基本的に頭痛の初診の患者様には頭部CT検査をお勧めしています。普通の頭痛と思われても、慢性副鼻腔炎や脳腫瘍など他の病気を見誤っていないか確認することは重要だと思います。続いて頭痛(緊張型頭痛・片頭痛・群発頭痛など)の種類に応じて投薬治療を行っています。緊張型頭痛などの場合は、同じ姿勢で長く仕事をしない、夜はグッスリ寝ていただくなどの生活習慣の修正をご提案します。普通の頭痛だけではなくて、うつ病や適応障害などの病気が疑われる患者様には、ご相談の上で心療内科受診をお勧めしています。

 患者様に「CTで頭の検査をしたことで不安が消えて、それだけで頭痛が軽くなった」と言っていただくことがあります。その時、背伸びをしてもCTを導入した甲斐があったと、大変うれしく感じます。

熊本城と谷干城

 昨日熊本に雨を降らせた寒冷前線が北上して、今日は関東に雨を降らせています。
いまだ車中泊をされている方も多くいらっしゃると聞きます。被災された方々の健康が気になります。

 熊本城は長く一度行ってみたいと思っていたお城でした。西南戦争の際に政府軍が立て籠もった堅城で、一か月以上にわたり薩軍の主力を食い止めました。敗走する薩軍が「(政府軍ではなく加藤)清正公に敗れた」と嘆いたという話が伝わっています。そんなお城の石垣が倒壊するなんて、やはり大きな地震だったのだと思います。

 ちなみに、この時の政府軍側の司令官が谷干城という土佐の人で、少し変わった名でタニ・タテキと読みます。一時期この人に興味をもって調べたことがありました。なぜかというと、この人が一八六七年に京都の近江屋で坂本龍馬と中岡慎太郎が暗殺された現場に初めに駆け付けた人だからです。

 谷が現場に駆け付けた時、すでに坂本龍馬は絶命していました。しかし中岡慎太郎は一日生き伸びて、初めのうちは意識もあったようです。谷は暗殺の様子を中岡慎太郎から詳しく聞いた可能性が高い。谷は犯人として新選組を疑っていたようですが、今では京都見回り組が実行犯である説が有力です。しかし、新選組にしろ京都見回り組にしろ当時の治安維持のための公的機関ですから、殺害後堂々と名乗りを上げてもよかったのに、そこのところどうなんでしょうかね。いまだ真犯人は確定されていないようです。

 最後に、桜新町商店街の募金活動の一環としてクリニック内に熊本地震への募金箱を設置しております。5月下旬までとなりますが、ご協力ほどお願い申し上げます。

ジカ熱の流行について

 大分暑くなってきましたね。8月にはブラジルでオリンピックがあります。そうなると気になるのは、南米でのジカ熱の流行です。感染症はぼくの専門ではありませんが、ジカ熱は小頭症を起こす可能性が疑われたころから注目していました。

 ジカ熱はアフリカで発見された感染症で、南米土着の病気というわけではありません。以前東南アジアでも流行が確認されたこともあります。ジカ熱のウイルスは主にネッタイシマカを宿主として人に感染して、それが妊婦の場合胎児に小頭症を発症することがあるようです。機序は不明ですが感染後にギランバレー症候群を発生したという報告もあり、神経系に特異的的にダメージを与える機能を備えたウイルスなのかもしれません。

 今年の2月にWHOが公衆衛生上の非常事態宣言を出し、日本政府も第4種感染症に指定しました。妊娠の可能性がある方は流行地には行かない方がいいと思います。妊婦さんの例は別として、感染した場合発熱などの症状は同じ蚊が媒介するデング熱や黄熱に比べると軽いという話もありますが、出来ればかかりたくないものです。

 われわれが蚊が媒介する病気ですぐに思い浮かべるのは、日本脳炎ではないかと思います。日本脳炎はアカイエカを宿主として中枢神経系に異常をきたす疾患ですが、1970-1980年代のワクチン接種によって、急速に患者数を減らすことが出来ました。しかし、ジカ熱ワクチンはまだ開発されていません。おおよそ今の日本にはネッタイシマカはいませんが、別のジカ熱を媒介するヒトスジシマカ(通称ヤブカ)がいます。日本に入ってきて流行する可能性がないとはいえない。

 ワクチンがありませんから、もし流行したら蚊に刺されないようにするしかありません。他の予防策はボウフラが発生するような雨水が溜まるようなもの、捨てられたペットボトルや古タイヤなどをきちんと処分することです。防疫上の問題からも、ブラジルのオリンピックは注目しなければいけないと思います。