遠隔診療いろいろ

【はじめに】 いままで遠隔診療は様々な要因で規制されていましたが、政府の方針転換により環境が整ってきました。遠隔診療とは電話・パソコン・スマートフォンなどを用いて離れた場所から患者様を診療することをさします。まだ社会的なインフラが追い付いていない側面(特に診療報酬などの点)があります。しかし、今後も発達が予想される分野であり、患者様の利便性向上が望まれるので2017年4月より当クリニックも取組むことにしました。

【遠隔診療の歴史と法的根拠】 簡単ですが遠隔診療の歴史と、基本となる法的な根拠をまとめてみました。興味のある方はご参照下さい。

 長い間、医師法第20条(昭和23年制定)※1によって、診療は「対面診療」が義務づけられてきました。当時は通信手段が未熟であり、遠隔地にいる患者様への誤診や経営側の診療行為の濫用を防ぐことが必要でした。一方、アメリカやアフリカなど広大な診療圏を対象とする海外では、郵便制度を使ったり電話を使ったりしながら診療が試みられました。このように世界規模で遠隔診療の経験が蓄積されました。また、処方箋や薬剤の扱いから、薬剤師法※2も遠隔診療を直接規制するものではありませんでしたが、考慮に入れる必要がありました。

 平成9年 12 月 24 日に厚生省は、医師法第20条を踏まえた上で基本となる考え方を示しました。診療は医師又は歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本であり、 遠隔診療はあくまで直接の対面診療を補完するものとして行うべきと定めました(主に遠隔地を対象とした部分的解禁)。その上で、遠隔診療の対象となる在宅酸素療法などの九つの対象および内容を上げて遠隔診療の範囲を決めました。

 その後、ICT革命による双方向通信が劇的に進歩して遠隔診療をめぐる環境が一変しました。患者様の側からも通院の負担が軽減される遠隔診療への期待が高まりました。「平成9年遠隔診療通知」について、平成27年8月10日に厚生労働省によって改めて「離島、へき地の患者」「遠隔診療の対象及び内 容」はいずれも例示でありそれだけに限定されないこと、直接の 対面診療と適切に組み合わせて行われるときは遠隔診療を行っても差し支えないこと、さらに必ずしも直接の対面診療の後で遠隔診療を行うものではないことなどが明示されました。※3

  以上の経緯や厚生労働省の発表をまとめると、2017年3月で発生遠隔診療に関する法規制は一般的に次の3つに要約されています。

  1. 急性期の疾患(かぜや腹痛など)に対しては、原則として対面診療が必要
  2. 初診で対面診察すれば、それ以降の再診を遠隔診療で行うことは原則的には可能
  3. 必ずしも初診で対面診察の必要はないが、後で必ず対面診療の機会を設ける必要があり、遠隔診療だけで完結するサービスは不許可

【追記】その後、2018年3月の診療報酬改定で「オンライン診療料」が創設されましたが、概ね上記の条件は継承されました。急性期の疾患、初診や多様な病気についての対応は、遠隔診療においては未だに難しい状況です。

以上

【参考資料】

※1 医師法 第20条(資料1);医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

※2 薬剤師法(資料2);薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。① 患者又は現にその看護に当たつている者が特にその医師又は歯科医師から薬剤の交付を受けることを希望する旨を申し出た場合 ② 医師法 (昭和二十三年法律第二百一号)第二十二条 各号の場合又は歯科医師法 (昭和二十三年法律第二百二号)第二十一条 各号の場合

※3 遠隔診療に関する通達(資料3)  遠隔診療に関する通達